【製薬・MRブログ】GSKがメディセオ・地方卸と取引停止?

RISFAXで衝撃的な記事が出ておりました。
欧州外資系メガファーマのグラクソ・スミスクライン社が医薬品卸メディセオと地方卸と取引停止をするとのことです。
取引停止に関する詳細な情報は把握できておりません。

就職活動中の学生など業界以外の人にとって、少し分かりやすく解説します。
どのような影響が予想されるのか?については私見です。
✔︎本日の内容
- GSK社とは
- 医薬品卸 大手4社
- 医薬品メーカーMRと医薬品卸MSの関係
- 予想される影響
✔︎本記事の信頼性:僕のこと
私は、現在下記のテーマについて情報発信しております。
僕のMR経験です。
今回は医薬品卸のお話です。開業医担当歴が浅いので、医薬品卸のMSさんとの繋がりは浅い方でした。
✔︎ 僕のMR経験
GSK社とは
グラクソ・スミスクラインについての概要です。
イギリスのロンドンに本社を置く、世界有数のグローバルファーマです。
2019年、世界で5番目の売上規模の会社です。
国内でのシェアは10位前後を推移しておりますが、約2500億円〜約3000億円の日本国内の売上規模があります。
✔︎ グラクソ・スミスクライン社の疾患領域
- 呼吸器領域
- ワクチン領域
- HIV領域
グローバルの注力している領域は上記のようです。
現在の国内の注力品は、ホームページから推察しますと下記の通りのようです。
✔︎ グラクソ・スミスクライン社の注力製品(国内)
- ロタリックス(ワクチン)
- テリルジー(COPD)
- ヌーカラ(喘息)
- ベンリスタ(SLE)
- ボトックス(様々)
開業医市場に注力していない訳ではなさそうです。
オンコロジー事業領域の設立のニュースもございました。
今後は、オンコロジー領域にも注力していくようです。
今後の製品ラインナップを考慮して、取引卸を選択していく決断をした可能性もあります。
医薬品卸 大手4社

✔︎ 医薬品卸 大手4社とは
- 株式会社メディパルホールディングス(通称:メディセオ)
- アルフレッサホールディングス株式会社(通称:アルフレッサ)
- 株式会社スズケン(通称:スズケン)
- 東邦ホールディングス株式会社(通称:東邦薬品)
通称メガ卸と言われているのは上記の大手4社です。
✔︎ 医薬品卸 大手売上ランキング(2020年3月期)
- 株式会社メディパルホールディングス(通称:メディセオ):3兆2530億円
- アルフレッサホールディングス株式会社(通称:アルフレッサ):2兆6585億円
- 株式会社スズケン(通称:スズケン):2兆2134億円
- 東邦ホールディングス株式会社(通称:東邦薬品):1兆2637億円
今回GSKが取引停止を発表したメディセオはメディパルHDの参加です。
株式会社メディセオの売上は、2兆326億74百万円(グループ会社への売上高を含む)です。
このような規模の大手卸と取引を停止する方向性の記事が出たのです。
医薬品卸業界の課題
医薬品卸業界の経営課題は、今も昔も変わらないのです。
✔︎ 医薬品卸の課題
- 医薬品の安定供給
- 収益性改善
医薬品卸の使命感として「医薬品の安定供給」があります。
医療機関にある薬剤は、医薬品卸から運ばれて納入されております。メーカーから直配ではありません。
✔︎ 医薬品卸は常に板挟み状態
そして医薬品卸業界は、利益が低い業界構造なのです。
医療機関の薬剤納入価格を決めているのは、医薬品卸です。
医薬品卸は、医薬品を高い価格で販売したい医薬品メーカーからの圧力があります。
それに加えて、医療機関からの値下げの圧力も大きいのです。
医療機関の経営も厳しいため、1円でも安く医薬品を購入できる卸から納入したいと思っているからです。
医薬品卸は、医療機関と医薬品メーカーの利益の板挟み状態なのです。
医薬品メーカーMRと医薬品卸MSの関係とは?
今回の記事「GSKがメディセオと取引を停止するかも?」という記事は、MRにとってどのような影響があるのでしょうか?
そのお話をする前に、なぜ医薬品メーカーのMRと医薬品卸のMSの関係について、ざっくりご紹介します。
医薬品卸は医療機関・調剤薬局と取引契約をしている
病院やクリニック、そして調剤薬局と医薬品の納入・取引契約をしているのは医薬品卸です。
武田薬品や第一三共、今回のGSKのような医薬品メーカーが、直接医療機関に薬剤を納入する取引をしておりません。
このような流れになっているのです。
なぜMRはMSとコンタクトを取るのか?
なぜMRはMSとコンタクトを取るのでしょうか?
医療機関は医薬品卸と取引をしているからです。取引例を参考にご紹介いたします。
✔︎ A内科クリニックの取引例
- A内科クリニックの取引卸:東邦薬品
- A内科クリニックの門前薬局:東邦薬品、アルフレッサ
✔︎ A内科クリニックの取引の背景
- A内科クリニックは開業時から東邦薬品の支援を受けました。
- そのため、A内科クリニックは東邦薬品とだけ取引をしております。
- 東邦薬品のMSは、A内科クリニックの院長から絶大な信頼を得ております。
ここでZ製薬のMRは、生活習慣病領域の新薬「ポニョ(仮)」をA内科クリニックで採用したいと考えております。
MRがA内科クリニックに訪問をしても、月に1回も面会はできない状況です。

方法は、様々かと思います。2択であれば、どちらの方法を選択されるのでしょうか?
- 毎日 A内科クリニックに通う
- A内科クリニックの院長に信頼されている東邦薬品のMSと同行して訪問をする
これこそMRがMSとコンタクトを頻繁に取る理由の一つだと思います。

そうなんです。最近は下記のB内科クリニックのようなケースが増えてきているようです。
✔︎ B内科クリニックの取引例
- B内科クリニックの取引卸:メディセオ、アルフレッサ、スズケン
- B内科クリニックの門前薬局(グループ調剤薬局):メディセオ、アルフレッサ、スズケン、東邦薬品
✔︎ B内科クリニックの背景
- B内科クリニックの取引卸は、アルフレッサがメインではあるが、各社出入りしている
- B内科クリニックの門前薬局:各MSともに薬局の出入りがメインである
これが事実ではなくとも、MR目線で見ると、MSの活動がこのように見えてくるケースがあります。
「処方元に強くないケース」っていうケースです。
50代以上のMRの方は、MSに対するアプローチに重きを置いております。
それは昔の営業スタイルを踏襲しているからでしょう。
しかしながら、そのようなMRの売上がスゴイのかと言われるとそうでもない。
結局はMRが処方元に強くないと売れないからです。
予想される影響とは

✔︎メディセオとの取引停止の影響は?(私見)
- 短期的、瞬間風速で影響はあるかもしれない
- 長期的な影響はない
なぜならば、製薬会社の新薬開発の方向性から予想可能だと思います。
プライマリー領域からスペシャリティ・オンコロジー領域のシフトしております。
プライマリー領域の薬剤選択は、今後「フォーミュラリー」の影響を受ける可能性が出てくるでしょう。
MRが医師に処方提案をする領域は、専門的な薬剤に特化していきます。
メガファーマが取引をする医薬品卸を絞ることによって、医薬品の値引き合戦から薬価を守ることができる。
そのための決断をしたのではないでしょうか?
少なからず、医薬品卸にとっては対岸の火事ではない、その可能性もあります。