フォーミュラリー:特定機能病院での算定要件、黄信号
こんにちは!コロスケです!
今日は「フォーミュラリーが診療報酬の算定要件に組み込まれるのか?」についての続報がありました。
ちょっとポイントを自分なりにも整理していきたいと思いまして、この話題を取り上げました。
前回の記事もご参照ください。
特定機能病院の算定要件にいよいよフォーミュラリー策定か? こんにちは!コロスケです!今日は「特定機能病院の算定要件にいよいよフォーミュラリー策定か?」についてです。なぜこのテーマについて触れるのか?につ[…]
2019年12月12日 中医協総会の結果
先週末に中医協総会がありました。
中医協とは、「中央社会保険医療協議会」のことで、日本の健康保険制度や診療報酬の改定などについて審議する厚生労働相の諮問機関です。
ここで議論されたことは、「院内フォーミュラリーを2020年度診療報酬改定で特定機能病院に試行的な評価を導入すること」です。
厚労省は、この院内フォーミュラリーのことを“使用ガイド付きの医薬品集”としております。
厚労省が期待していることは以下の2点なんです。
- フォーミュラリにより、医薬品の適正使用や後発品の使用推進などが期待できる
- 地域基幹病院である特定機能病院への導入で地域に波及する
厚労省から総会で提示されたイメージは下記の通りです。
- 特定機能病院の21.3%が同医薬品集(院内フォーミュラリー)をすでに策定済みであること
- 具体的な運用方法:「有効性、安全性、経済性に関するエビデンスを病院薬剤師等が収集、分析、評価し、医師と協議して医薬品集案を検討」
論点は、
- 特定機能病院での院内フォーミュラリーの取り組みの試行的推進に向け「特定機能病院で同医薬品集の作成・維持を行う体制を評価する」ことを検討してはどうかという点
結果様々な意見が出ておりますが、誰がどのようにコメントしたのか?について紹介する前に、
中医協のメンバーはそれぞれの立場でコメントされております。
どのようなメンバー構成であるのかをまず整理してご紹介いたします。
中医協メンバー
中医協のメンバー構成は大きく3つに分かれます。「公益委員」「支払側」「診療側」です。
その1:公益委員
公益委員の役割です。
会議の日程、議題等、中医協の運営に関する事項について協議を行い、支払側委員、診療側委員はその協議の結果を尊重することになっている。
そして、診療報酬等に係る答申等を行う場合には、あらかじめ公益委員が診療報酬等の実施の状況について検証を行い、その結果を公表する取り決めとなっている。
2019年3月1日現在の専門委員は以下の通り。
- 荒井耕 – 一橋大学大学院商学研究科教授
- 関ふ佐子 – 横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授
- 田辺国昭 – 東京大学大学院法学政治学研究科教授(会長)
- 中村洋 – 慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授
- 野口晴子 – 早稲田大学政治経済学術院教授
- 松原由美 – 早稲田大学人間科学学術院准教授
支払側委員(保険側)
健康保険や、保険者など、医療費の大部分を負担している支払側の委員です。
健康保険組合の維持も厳しい状況ですので、できる限り医療費の削減を希望しております。
2019年3月1日現在の専門委員は以下の通り。
- 吉森俊和 – 全国健康保険協会理事
- 幸野庄司 – 健康保険組合連合会理事
- 平川則男 – 日本労働組合総連合会総合政策局長
- 間宮清 – 日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員
- 宮近清文 – 日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理
- 松浦満晴 – 全日本海員組合組合長代行
- 榊原純夫 – 愛知県半田市長
診療側:医師、歯科医師、薬剤師側
診療をしている、医師会、歯科医師会、薬剤師会の代表です。
2019年3月1日現在の専門委員は以下の通り。
- 松本吉郎 – 日本医師会常任理事
- 今村聡 – 日本医師会副会長
- 城守国斗 – 日本医師会常任理事
- 猪口雄二 – 全日本病院協会会長
- 島弘志 – 日本病院会副会長
- 遠藤秀樹 – 日本歯科医師会常務理事
- 安部好弘 – 日本薬剤師会副会長
中医協総会の意見まとめ
厚労省案に対しての意見は割れました。
- 診療側:強い反対意見が相次いだ。
- 支払い側:一部の慎重意見があった。
診療側の意見
診療側の意見は下記の通りです。
松本吉郎委員(日本医師会常任理事)の意見
「個々の医療機関で検討するのはいいが、安定供給の問題や、薬価基準収載品でも実質的な使用制限が設けられてしまうような状況、高度な医療提供等が求められる特定機能病院で経済性を重視した薬剤選択が期待されているのかなど、いくつかの疑問がある」と指摘。
「現時点で診療報酬と結び付けることには反対する」と述べ、これまでと同様、慎重な対応を求めた。
「医師の裁量権は今後も維持しなければならないが、この医薬品集の運用によって、医師の同意がないところで制限がかかる可能性もある」などと重ねて反対した。
「医療機関レベルで検討の場がある場合はいい」と述べ、各医療機関でDI室などを通じて運用する意義を認めた。
そのうえで、メーカーの回収や撤退時の安定供給に懸念を示し、「診療報酬と結びつけることは現時点では反対する」と述べた。
さらに、医師の処方権への影響も、「医師全体の総意のないところで、ガイドラインによって制限がかかる。非常に製薬企業の説明がどこに行くかも含めてしっかりと検討して考えるべき。かなり影響はする」と口にした。
「取り組みをすることを阻害するわけではないが、特定機能病院のような人員のあるところ、余裕のあるところで中小病院では無理だ」と診療報酬上での評価に改めて反対の姿勢を強調した。
今村聡委員(日医副会長)
「同一薬効でもそれぞれの薬剤に違いがあることを把握して適切な処方ができる。特定機能病院で経済原則による在庫管理で品目数を減らすことは必ずしもいいとは思えない」などと指摘した。
特定機能病院で初期研修を受ける医師が多いことに触れ、「違いがあることを知ることができるからこそ、適切な処方ができるということもある。
ルールを作ることが経済原則だけを進めると、使用される薬が制限される」と懸念を示した。
診療報酬上で評価するための「アウトカムは一体何なのか。後発品の使用率だけを評価して点数をつけることはあり得ない」と改めて反発した。
診療側の有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)は
「単に経済性だけでなく質と高い有効性を示す観点から有益」として、体制面での評価に賛同した。
診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)
「診療報酬で評価するのはまだまだ早い。最適化をどう取り入れることができるのか、もう少し検討していく余地があるのではないか」と同調した。
支払側の意見
支払側の意見です。
支払い側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)
同医薬品集の作成・維持の評価を検討する前提として
「策定プロセスや、策定委員会などの体制整備に関する標準的な在り方の検討が必要だ。先行事例などのエビデンスを集め、運用上の課題を把握して標準的な実施体制を検討することが必要だ」
と慎重な姿勢を示した。
「評価しないと推進しないかということをどう考えるか。しっかり議論する必要がある。保険者としては点数をつけないとやらないのか、となってしまう」との考えを表明。
幸野庄司委員(健保連理事)
特定機能病院での同医薬品集を作成・維持する取り組みについて「診療報酬で評価すべきだ」と厚労省の論点を支持。
さらに「後発医薬品使用体制加算の要件に、院内使用ガイド付き医薬品集の作成を入れるほか、後発品使用状況、医薬品の安全性、経済効果などを測定して報告してもらう。
医師の処方権を侵害するのではない」とも述べた。
後発医薬品使用体制加算の算定要件とすることを提案し、「診療報酬上で評価すべき」と述べた。
「地域の模範となる拠点病院なので、後発品の使用状況や経営的効果を測定し、報告するということも要件に入れる」ことを提案した。
支払側の幸野委員は一歩も譲らず、安全性や経済面でのアウトカム評価ができるとの考えを表明。「評価しないと推進するスピードが遅くなる。ルールが標準化されてくる。地域中核病院が先陣をきってやるということは一定の評価があってもいいのではないか」と理解を求めた。
まとめ
現時点では、支払側と診療側で綺麗に意見が分かれている状態で黄色信号がともっております。
支払側としては、
後発品のないPPIの処方量が多いから何が何でも後発品のあるPPIを先行してほしい。など
診療側としては、
高い診療レベルを求められる病院、初期研修の多い病院で導入することは如何なものか?
など様々な意見が飛び交いました。
業界の人であっても、なくても、このようなマクロな視点の議論や意見を整理することは非常に有用かと思います。
みなさんもこのような記事を整理して自分なりの立場で意見をまとめてみては如何でしょうか?