令和のレッドオーシャン HIF-PH阻害薬市場
こんにちは!コロスケです。
今回は「令和のレッドオーシャン HIF-PH阻害薬市場」についてご紹介いたします。
このテーマを取り上げる理由は至ってシンプルです。
MRとして予想される「ムーブメント」「転職市場」は抑えておくべきポイントだからです。
おそらくHIF-PH阻害薬市場が転職市場を賑わすことは少ないかなと思ってはおります。
その理由も、すでに自社販売体制が整っているメーカー同士の戦いだからです。
しかしながら、MRとして「PD-1」「DPP4」「リウマチ」「SSRI」「ARB」「スタチン」「SSRI」・・・など抑えておきたいムーブメントはあります。
今回取り上げますHIF-PH阻害薬も令和のムーブメントとなるでしょう。
HIF-PH阻害薬とは
今回テーマのHIF-PH阻害薬とはどういった製剤なのでしょうか?
HIF-PH阻害薬とは、「低酸素誘導因子(hypoxia-inducible factor: HIF)プロリン水酸化酵素阻害薬」のことです。
低酸素誘導因子とは、細胞に対する酸素供給が不足状態に陥った際に誘導されてくるタンパク質です。
つまりは、細胞への酸素の供給が不足した時に誘導されるエリスロポエチン転写因子「低酸素誘導因子(HIF)」を安定化させ、エリスロポエチンの産生を増やすとともに、鉄の利用効率を高めて赤血球の産生を増やし、貧血を改善します。
スポーツ選手の高地トレーニングの時に低酸素状態になると思いますが、、低酸素状態に体が慣れるためにエリスロポエチン産生が高まります。
一方で、エリスロポエチンは、ホルモンの1種で腎臓で分泌されております。エリスロポエチンは赤血球数(働き:酸素・二酸化炭素の運搬)を調整する働きがあり、腎機能が低下するとエリスロポエチンの分泌が少なくなり赤血球数も減少するため、貧血症状があらわれる、といったわけです。
体内でエリスロポエチンが産生されるメカニズムがこの20年で明らかになりました。そして、薬理学的にその機構を刺激することが可能になりました。そして腎性貧血の「HIF活性化薬」として開発されました。
貧血と腎臓
腎性貧血の治療薬ということですが、腎臓と貧血はどのように関連しているのでしょうか。
その前に、「貧血」についてご紹介します。
貧血って?
貧血は、鉄分の不足や病気などが原因で血液中の赤血球が減り、体に必要な酸素が十分に行き届かなくなった状態です。
貧血になると、「疲れやすい」「息切れがする」「顔色が悪くなる」などの症状が現れます。
つまりは、貧血とは血液中の赤血球が減ることによります。
赤血球の働きはご存知ですよね?
赤血球は、肺で受取った酸素を全身に行きわたらせ、逆に不要となった二酸化炭素を全身から回収して肺に戻し、体外へ排出する役目を担っています。
赤血球がガス交換をスムーズに行うためにはヘモグロビンというたんぱく質が必要です。このヘモグロビンが赤い色素であるため、血液が赤いのです。
健康診断で赤血球の数が少ないと肝臓や腎臓の働きが悪いのではないか?となるわけです。
腎性貧血って?
腎臓病が原因になって起きる貧血を「腎性貧血」と言います。
腎臓は、エリスロポエチンというホルモンを出し、骨髄に赤血球を作るように働きかけています。
腎臓が悪くなると、エリスロポエチンが作られにくくなり、赤血球が減っていってしまう、ということです。
腎性貧血は日本で1300万人を超えるCKDの主要な合併症なんです。
腎性貧血治療薬
ここでこれまでの治療薬についてご紹介します。
ダルベポエチン アルファ (ネスプ®)
国際的には2001年に誕生した製品。
日本では2012年より販売。
協和発酵キリンの製品「ネスプ」です。
持続型赤血球造血刺激因子製剤で2018年の売上高537億円の超大型製品です。
エポエチン ベータ ペゴル(ミルセラ®)
中外製薬のミルセラです。
売上高が2018年で約200億円。こちらも大型製品です。
このネスプとミルセラの市場の中に今後、HIH-PH薬が登場してくるわけです。
では開発のラインナップを見てみましょう。
HIF-PH阻害薬
ここでHIF-PH阻害薬について、現在の開発状況をご紹介しましょう。
脅威のレッドオーシャンですね。
一番乗り、ファーストインクラスはアステラス製薬のロキサデュスタット「エベレンゾ(R)錠」です。
2019年9月に承認になりました。
現在発売になっているのは、この1剤のみ。
しかしながら、ここにきて一気に申請ラッシュです。
田辺三菱製薬のバダデュスタットが2番目として申請。
そしてグラクソ・スミスクラインのダプロデュスタットが3番目の申請。しかもネスプを販売している協和キリンと手を組むことに。レッドオーシャンを見据えて勝負しにきましたね。
4番手は、JT・鳥居のエナロデュスタットが申請!!!
ここまで1製品が発売。3製品が申請中です。
そして5番手にバイエル薬品のモリデュスタットです。
ここまでくると先行販売・逃げ切りのスピード勝負のような気がしますが、、、、。
厚労省の情報提供・販売ガイドラインもありますし、勝負の行方がきになるところです。
先行逃げ切りのアステラス・田辺の勝利か?
歴史的な強みから協和発酵キリン・GSKか?
遅れをJT・鳥居、バイエルがどのように挽回するのか?
決着は2025年ー2027年のシェアトレンドでわかるでしょう。
楽しみな市場です。