40代MRが国内MBAを目指すのは遅いのか?将来不安と学び直しのリアル

コンビニの駐車場で、エンジンを切れないまま、しばらく動けなかった。

フロントガラスには細かい雨粒がついていた。

助手席には、今日使いきれなかった製品資料。後部座席には、病院訪問用の紙袋。カップホルダーには、冷めきったコンビニコーヒー。

スマホの検索窓には、こう打っていた。

「40代 MR MBA 遅い」

打った瞬間、自分でも少し笑ってしまった。

遅いかどうかを検索している時点で、たぶんもう答えは出ている。

遅いんじゃないか。

今さらなんじゃないか。

家族もいる。住宅ローンもある。子どもの教育費も見えてきた。会社では若手の勢いも出てきた。上司からは「次はマネジメントを意識してくれ」と言われる。

でも、本音ではわかっている。

このままMRとして数字を追い続けるだけで、50代を迎えていいのか。

その不安が、雨の夜の営業車の中で、じわっと胸に広がっていた。

40代MRが国内MBAを考える夜

40代になると、MRの仕事の見え方が変わる。

20代の頃は、ただ走れた。

大学病院の外来が終わる時間を狙って医局前で待つ。先生が出てきた瞬間に声をかける。断られても、翌週また行く。数字が足りなければ、訪問件数を増やす。上司に詰められても、飲んで寝れば翌日は動けた。

30代になると、少しずつ現実が見えてくる。

営業成績だけで評価されるわけではない。社内政治もある。支店長の好みもある。本社との距離感もある。自分より若いMRがマーケティング部に異動することもある。

「え、あいつが本社?」

そんな言葉が、営業所の会議室の隅で小さく聞こえる。

誰も大きな声では言わない。

でも、みんな見ている。

誰が本社に呼ばれるのか。

誰がずっと現場に残るのか。

地方営業所の会議室には、独特の空気がある。朝から数字の進捗を見せられ、エリア別の達成率がスクリーンに映される。未達の数字だけがやけに大きく見える。

上司が言う。

「このままだと、厳しいぞ」

その言葉は、今月の数字だけに向けられているようで、実は自分のキャリア全体に刺さってくる。

40代になると、さらに重くなる。

若手のように勢いだけでは戦えない。

管理職になれる人は限られている。

本社職に行ける人も限られている。

転職市場で自分の年齢を見ると、条件が急に現実的になる。

年収は下げたくない。でも、今の会社に残っても先が見えない。

そんな夜に、ふと検索してしまう。

「国内MBA 社会人」

「MBA 40代 遅い」

「MR 本社職 MBA」

この検索は、かっこいいキャリアアップのためというより、もっと泥臭い。

焦りだ。

不安だ。

このままではまずい、という感覚だ。

40代MRの転職不安については、以前かなり本音で書いた。夜の営業車で転職サイトを見てしまう感覚がある人は、先にこちらを読んでほしい。

https://hibino-gimon.com/blog/https-hibino-gimon-com-pharma-real-mr-40s-job-change-night/

40代から国内MBAを目指すのは遅いのか

結論から言うと、40代から国内MBAを目指すこと自体は遅くない。

ただし、20代や30代前半と同じ感覚で目指すと、たぶん苦しくなる。

40代には40代の戦い方がある。

20代なら、まだ「これから何者になるか」で語れる。

30代なら、「現場経験をどう伸ばすか」で語れる。

でも40代は違う。

「これまで何をしてきたのか」

「その経験を何に変えるのか」

「残りの会社員人生で、どんな価値を出すのか」

そこを見られる。

だから、40代MRが国内MBAを考えるなら、単に学歴を足す話ではない。

営業経験を、別の言葉に変える作業になる。

たとえば、MRとして大学病院を担当していた頃。

医局前で何度も待った。

講演会の依頼をした。

処方意向を探った。

競合品の動きを聞いた。

先生の一言に一喜一憂した。

その経験は、現場では「営業活動」と呼ばれる。

でも、視点を変えると、それは顧客理解であり、ステークホルダーマネジメントであり、マーケットインサイトの収集でもある。

MR時代には、そんな言葉で自分の仕事を説明してこなかった。

「今月、何件新患が出ました」

「この施設で採用が取れました」

「この先生が少し前向きです」

それで会話が成立していた。

でも、本社職やマーケティング職では違う。

なぜその施設で動いたのか。

市場構造はどうなっているのか。

患者フローのどこにボトルネックがあるのか。

競合と比べて、なぜ選ばれないのか。

現場の声を、事業の言葉に変える力がいる。

国内MBAは、その変換作業の訓練になる。

もちろん、MBAを取れば本社に異動できるわけではない。

名刺にMBAと書けば、急に会議で発言力が増すわけでもない。

でも、MRとして積み上げてきた経験を、戦略、マーケティング、財務、組織の言葉で整理する機会にはなる。

そこに価値がある。

MRの市場価値については、こちらの記事でもかなり現実的に書いている。MBAを考える前に、自分の今の立ち位置を見たい人には刺さると思う。

40代MRが感じる本社職への距離感

本社職に行きたい。

そう思ったことがあるMRは多いと思う。

でも、口に出す人は少ない。

営業所でそんなことを言うと、少し浮く。

「現場を軽く見ている」

「数字を出してから言え」

「本社に行きたいだけだろ」

そんな空気がある。

だから、多くのMRは黙っている。

でも、心の中では本社職を見ている。

マーケティング部の人が会議で話す。

ブランド戦略。

市場分析。

KOLマネジメント。

ペイシェントジャーニー。

カスタマーインサイト。

聞いていると、なんとなくわかった気になる。

でも、自分がその立場で話せるかと言われると、急に言葉が出なくなる。

現場のことなら話せる。

先生の反応なら話せる。

どの施設で何が起きているかも話せる。

でも、それを戦略に落とすとなると、手が止まる。

40代MRが本社職に距離を感じる瞬間は、ここにある。

経験はある。

でも、言語化できない。

現場感はある。

でも、構造化できない。

数字は追ってきた。

でも、事業全体のPLを見て話すことには慣れていない。

この差は、意外と大きい。

ある会議で、マーケティング部の若手社員が言った。

「このセグメントは、処方意向よりも施設オペレーションの制約が大きいと思います」

半沢(仮)は、その瞬間に少し黙った。

言っていることはわかる。

でも、自分ならその言い方はできなかった。

たぶん、「先生は悪くない反応でした。でも、なかなか使ってもらえません」と言っていた。

同じ現象を見ているのに、言葉が違う。

その違いが、本社職との距離に見えた。

MRから製薬マーケティング職を目指す人には、こちらの記事もつながる。現場から本社に移るときの感覚をもう少し深く書いている。

国内MBAで得られるものは、知識だけではない

国内MBAで学ぶものと聞くと、多くの人はマーケティングや財務を思い浮かべる。

たしかに、それもある。

でも、40代MRにとって一番大きいのは、自分の経験を一度壊して、組み直すことだと思う。

MRは、どうしても「数字」で語られる。

達成率。

前年比。

新規採用件数。

面談回数。

講演会参加者数。

もちろん、数字は大事だ。

でも、数字だけで自分を見続けると、だんだん苦しくなる。

未達の月は、自分の価値まで下がったように感じる。

上司から電話が来る。

「今月、どうするんだ」

その一言で、胃が重くなる。

帰りの車内で、つい独り言が出る。

「どうするって言われてもな……」

この感覚は、MRならわかると思う。

国内MBAで学ぶと、数字の見方が少し変わる。

未達を、根性不足だけで見なくなる。

市場が縮んでいるのか。

競合が伸びているのか。

患者導線が変わったのか。

施設側のオペレーションが詰まっているのか。

医師の認識にギャップがあるのか。

売れない理由を、自分の努力不足だけにしなくなる。

これは、かなり救いになる。

もちろん、勉強はしんどい。

仕事が終わってからケースを読む。

土日にレポートを書く。

家族が寝たあとにノートPCを開く。

眠い。

疲れている。

翌週の会議資料も作らないといけない。

それでも、自分の経験が少しずつ言葉になっていく感覚がある。

「あの施設で起きていたことは、こういう構造だったのか」

「先生が動かなかった理由は、製品価値の問題だけじゃなかったのか」

「営業所で感じていた閉塞感は、組織設計の問題でもあったのか」

こういう瞬間がある。

それは、ただ資格を取ることとは少し違う。

40代のMRにとっては、自分の20年近い経験を、もう一度使える形にする作業に近い。

製薬マーケティングのしんどさについては、こちらでも書いている。本社に行けば楽になるわけではない、という現実も知っておいた方がいい。

40代でMBAを取っても意味がない人

ここは、きれいごと抜きで書きたい。

40代で国内MBAに行っても、意味が薄い人はいる。

たとえば、肩書きだけ欲しい人。

「MBAを取れば、会社が評価してくれるはず」

「転職で年収が上がるはず」

「本社職に行けるはず」

そう思っていると、たぶん期待外れになる。

会社は、MBAを取っただけでは急に扱いを変えない。

転職市場も、MBAだけで高く買ってくれるほど甘くない。

本社職も、資格欄だけを見て呼んでくれるわけではない。

むしろ問われるのは、何を考えてきたかだ。

MRとして何を見てきたのか。

なぜ国内MBAなのか。

何を研究したいのか。

その学びを、製薬会社の中でどう使うのか。

ここを自分の言葉で語れないと、MBAはただの飾りになる。

それから、勉強する覚悟がない人もきつい。

40代は忙しい。

会社では中堅以上として期待される。

若手の面倒も見る。

上司からの依頼も増える。

家庭でも役割がある。

平日夜に勉強する体力は、20代の頃とは違う。

土日に家族を放っておいて勉強することも簡単ではない。

それでもやる理由があるか。

ここを自分に聞いた方がいい。

「なんとなく不安だからMBA」

これだと続かない。

「今の営業経験を、次のキャリアにつなげるために学びたい」

「本社職に行けなくても、事業を見られる人材になりたい」

「転職でも社内異動でも、自分の言葉でキャリアを語れるようになりたい」

ここまで腹落ちしているなら、40代からでも遅くない。

MRのキャリアロードマップについては、こちらでも整理している。MBAを考える前に、自分がどのルートを狙うのかを見ておくと迷いにくい。

40代MRが国内MBA受験でつまずくところ

国内MBAを考え始めると、最初は少し前向きになる。

「やってみようかな」

「まだ間に合うかもしれない」

「本社職への武器になるかもしれない」

でも、調べ始めるとすぐ止まる。

志望理由書。

研究計画書。

面接。

小論文。

英語。

仕事との両立。

最初にぶつかるのは、志望理由書だと思う。

「なぜMBAなのか」

この問いが、意外と重い。

転職面接なら、なんとか話せる。

「これまでMRとして大学病院を担当し、エリア戦略を考え、売上拡大に貢献してきました」

それっぽく言える。

でも、MBAの志望理由になると、もう少し深く問われる。

なぜ今なのか。

なぜ国内MBAなのか。

なぜその大学院なのか。

何を研究したいのか。

自分の実務経験と、学びたいテーマがどうつながるのか。

ここで手が止まる。

研究計画書も同じだ。

「製薬業界のマーケティングについて研究したい」

これだけでは浅い。

どの市場か。

どの課題か。

なぜその課題なのか。

先行研究はあるのか。

実務にどう戻すのか。

普段、営業会議で話している言葉だけでは足りない。

だから、独学で進めると時間が溶ける。

平日の夜。

子どもが寝たあとにノートPCを開く。

検索する。

いくつかの記事を読む。

YouTubeも見る。

大学院の募集要項を開く。

でも、結局どこから始めればいいかわからない。

気づいたら23時半。

翌朝も普通に仕事だ。

「今日はもういいか」

そう言って閉じる。

これを何回か繰り返す。

40代MRにとって一番の敵は、能力不足ではない。

時間がないこと。

迷う時間が多すぎること。

そして、疲れていることだ。

独学か、講座を使うか

国内MBAは、独学でも目指せる。

実際、独学で合格する人もいる。

本を読み、募集要項を調べ、過去問を見て、研究計画書を書き、面接対策をする。

時間があり、自分で調べて整理できる人なら、それでいい。

でも、40代MRの場合、現実はけっこう厳しい。

平日は訪問、会議、資料作成、上司対応。

夜は疲れている。

土日は家族の予定がある。

それでも勉強時間を作らないといけない。

しかも、国内MBA受験は、ただ知識を覚えればいいわけではない。

自分のキャリアを棚卸しして、志望理由に変える。

現場経験を研究テーマに変える。

面接で、自分の言葉で語る。

ここが難しい。

特にMRは、経験が豊富な分、逆に整理しにくい。

大学病院担当。

地方営業所。

開業医対応。

講演会企画。

KOL対応。

数字未達。

競合品対策。

いろいろやってきた。

でも、それを一本のストーリーにするのが難しい。

だから、アガルートのような国内MBA対策講座を選択肢として見ておくのは、かなり現実的だと思う。

無理に申し込む必要はない。

最初は、どんな対策が必要なのかを見るだけでもいい。

志望理由書で何を問われるのか。

研究計画書はどのレベルまで詰めるのか。

面接では何を見られるのか。

そこを知るだけでも、独学で進めるか、講座を使うかの判断がしやすくなる。

40代MRは、時間をお金で買う感覚も少し必要になる。

若い頃のように、何でも遠回りして覚える時間はない。

迷っているうちに、1年はすぐ過ぎる。

転職エージェントの使い方についても同じだが、外部サービスは「依存するもの」ではなく、「自分の判断を早くするために使うもの」だと思っている。

MR向けの転職エージェントについては、こちらで本音を書いている。講座選びにも通じる考え方がある。

それでも40代MRがMBAを考える価値はある

40代で国内MBAを考えるのは、少し怖い。

遅いかもしれない。

続かないかもしれない。

家族に反対されるかもしれない。

会社で評価されないかもしれない。

転職にも直結しないかもしれない。

それでも、考える価値はある。

なぜなら、40代MRにとって一番怖いのは、何も考えないまま50代に入ることだからだ。

毎月の数字を追う。

会議で詰められる。

若手の育成をする。

担当施設を回る。

講演会を企画する。

それ自体は悪くない。

MRの仕事には、確かに意味がある。

医師と話し、患者さんにつながる情報を届ける。現場でしかわからないことも多い。

でも、自分のキャリアを会社任せにしたまま年齢を重ねるのは、やっぱり怖い。

本社職に行けるかどうか。

管理職になれるかどうか。

転職できるかどうか。

それを全部、会社や上司の判断だけに預けるのは危ない。

国内MBAは、魔法ではない。

取れば人生が変わるものでもない。

でも、自分のキャリアを自分の言葉で考え直すきっかけにはなる。

営業経験を、事業の言葉に変える。

現場の違和感を、研究テーマに変える。

数字に追われてきた日々を、キャリアの資産として見直す。

それができるなら、40代からでも遅くない。

あの雨の夜。

コンビニ駐車場で、半沢(仮)はまだスマホを見ていた。

「40代 MR MBA 遅い」

検索結果を何度かスクロールして、スマホを閉じた。

すぐに何かが変わるわけではない。

明日も朝から訪問がある。

月末の数字も足りない。

上司からの電話も来る。

でも、エンジンをかける前に、小さくつぶやいた。

「このままでは終わりたくないな」

たぶん、そこからでいい。

国内MBAを目指すかどうかは、まだ決めなくてもいい。

ただ、自分のキャリアをもう一度考えることからは、逃げない方がいい。

40代MRが学び直しを考えるのは、遅いからではない。

むしろ、今までの経験があるからこそ、ようやく意味が出てくる。

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