深夜0時12分、オフィスの照明だけがまだ白い
こういう日は、だいたい何かある。
画面には、半沢(仮)が昨日の深夜に直したブランドプランのスライドが映っていた。
部門長が腕を組んでいる。
「この市場認識、少し弱くない?」
最初の一言で、背中が硬くなる。
弱い。
この言葉は、マーケティングではよく出る。
メッセージが弱い。戦略が弱い。根拠が弱い。ストーリーが弱い。インサイトが弱い。
弱いと言われた瞬間、昨日の深夜までの作業が、机の上で静かに崩れていく感じがする。
「現場からの声を踏まえると、もう少し患者像を絞った方がいいかもしれません」
半沢(仮)がそう言うと、営業企画のメンバーが口を挟む。
「ただ、絞りすぎるとMRが話しにくいんですよ。全国で使うなら、ある程度幅を持たせたいです」
メディカルが続く。
「その表現だと、少しプロモーション上リスクがあります」
コンプライアンスが資料に目を落とす。
「ここは根拠資料を明確にしてください」
代理店が静かにパソコンを打つ。
誰も大声は出さない。
でも、全員が少しずつ別の方向を向いている。
マーケティング職のしんどさは、ここにある。
自分の意見だけで決められない。
現場の声も聞く。医師の反応も見る。メディカルの見解も聞く。コンプライアンスを通す。グローバルの方針も見る。売上責任も背負う。営業部が使える形に落とす。
そして最後は、なぜ売れないのかを聞かれる。
「半沢さん、この施策でどれくらいインパクト出る想定ですか?」
部門長が言った。
会議室の空気が、さらに薄くなる。
数字。
また数字だ。
何人の医師に届くのか。
何件のディテールにつながるのか。
どれくらい処方行動が変わるのか。
いつ売上に効くのか。
現場にいた頃、半沢(仮)は本社の施策を見て思っていた。
「これ、意味あるのか?」
今は、その言葉を浴びる側にいる。
会議室のモニターの光が、妙に冷たく見える。
誰かが紙コップのコーヒーを置く音がした。
カン、と小さく響いた。
その音だけが、やけに残った。
MRが「本社って何してるの?」と感じる瞬間は、たぶん普通にある。逆に本社側も「現場に届かない苦しさ」を抱えている。MRがきつい理由を現場目線で書いた記事も、合わせて読むとかなり立体的に見えると思う。
12時15分、ランチタイムも会議になる
昼休み。
そんなものは、カレンダー上には存在している。
でも、半沢(仮)の予定表には、12:00から13:00まで会議が入っていた。
タイトルは「ブランド施策進捗確認」。
ランチを食べながら参加してもよい、という空気ではある。
でも、実際には食べられない。
コンビニで買ったおにぎりが、デスクの左側に置かれたまま冷たくなっている。ペットボトルの水も半分しか減っていない。画面の向こうでは、営業部、デジタル、イベント担当が順番に話している。
「今月のWebセミナー集客ですが、想定より少し低いです」
「メール開封率は悪くありません」
「ただ、登録から視聴への落ち込みがあります」
「現場からは、案内のタイミングが遅いという声があります」
半沢(仮)は、聞きながらメモを取る。
チャットにも質問が飛んでくる。
「半沢さん、このKOLのスライド確認、今日中で大丈夫ですか?」
別の画面ではメールが来る。
「先生より抄録修正のご依頼です」
携帯も震える。
営業所長からだった。
食べられない。
返せない。
聞き逃せない。
画面の中で誰かが言う。
「半沢さん、どう思いますか?」
一瞬、言葉が出ない。
おにぎりの包装が、机の上で少し光っている。
さっきまで空腹だったはずなのに、もう食欲がない。
「そうですね。現場の導線をもう一度確認して、案内の切り口を少し変えた方がいいと思います」
口は動く。
それっぽいことは言える。
でも、頭の中では別のことを考えている。
午後の会議の資料、まだ直していない。
代理店へのフィードバック、まだ送っていない。
営業部長への回答、まだ保留している。
先生へのメール、まだ文面を作れていない。
昼休みの1時間が、仕事を片づける時間ではなく、仕事を増やす時間になっていく。
会議が終わったのは、13時04分。
すぐに次の会議のリマインダーが出る。
13時05分開始。
半沢(仮)は、おにぎりを見た。
食べるか。
捨てるか。
結局、パソコンを持って次の会議室へ向かった。
冷たいおにぎりは、夕方まで机の上に残った。
こういう働き方をしていると、ふと「自分は何のために本社に来たんだろう」と思う日がある。MRから別職種へ移る選択肢を整理した記事も書いているので、転職や異動を考えている人は一度読んでほしい。
15時30分、作業を始めた瞬間に電話が鳴る
やっと自分の作業時間が来た。
15時30分。
予定表では、30分だけ空いている。
半沢(仮)は、ここで午後のブランド会議用のスライドを直すつもりだった。
椅子に深く座り、画面を開く。
1枚目。市場環境。
2枚目。競合動向。
3枚目。課題。
4枚目。打ち手。
昨日の夜、ほぼ形にした。でも、朝の会議で崩れた。表現を変え、患者像を絞り、現場が使える言葉に直し、メディカルが許容できる範囲に収める。
この作業は、地味だ。
でも、ここを雑にすると全部が壊れる。
文字を1行消す。
別の表現に変える。
「ターゲット」では強すぎる。
「患者像」なら通るか。
「訴求」はやや営業色が濃い。
「情報提供の切り口」ならまだ自然か。
そんなことを考えていると、電話が鳴る。
代理店だった。
「半沢さん、すみません。今、少しだけよろしいですか?」
また、少しだけ。
「はい、大丈夫です」
大丈夫ではない。
「先生の講演スライドなんですが、タイトル周りのデザインを2案作りました。ただ、社内レビューに出す前に方向性だけ確認したくて」
メールで送ってください、と言いたい。
でも、メールで送られても、結局見る。
今聞いた方が早い。
画面共有で確認する。
デザイン自体は悪くない。でも、文字が多い。写真が少し軽い。製薬会社のセミナー案内としては少し派手すぎる。先生の雰囲気にも合っていない。
「もう少し落ち着いたトーンでお願いします。あと、このコピーは少し煽りが強いです」
「なるほどです。では、今日中に修正して再送します」
今日中。
また今日中が増えた。
電話を切ると、メールが4件増えていた。
そのうち1件は、営業部長からだった。
「今月の進捗が厳しいです。打ち手を明日の朝までに整理してください」
半沢(仮)は、しばらく画面を見た。
明日の朝まで。
今から、何を整理するのか。
施策はすでに走っている。
現場も動いている。
でも売上は計画に届いていない。
マーケティングは、売上が良いときは「営業が頑張った」と言われる。
売上が悪いときは「戦略が弱い」と言われる。
もちろん、そんな単純な話ではない。
でも、心のどこかでそう感じる瞬間がある。
パソコンのファンが小さく鳴っている。
半沢(仮)は、深く息を吐いた。
作業時間は、残り7分になっていた。
17時45分、数字を見る時間がいちばん胃にくる
夕方。
売上進捗のファイルを開く。
この時間が、いちばん嫌だった。
Excelの数字は、冷たい。
頑張ったとか、疲れたとか、土日に資料を直したとか、先生と何度も調整したとか、営業部と揉めながらも資材を作ったとか、そういうものは一切見てくれない。
達成か。
未達か。
伸びているか。
落ちているか。
それだけだ。
半沢(仮)は、エリア別の数字を見ていた。
北海道は少し戻っている。
九州は厳しい。
大都市圏は想定通り。
地方が弱い。
特定の施設群で落ちている。
競合の動きか。
患者数の問題か。
MR活動量か。
資材が刺さっていないのか。
単に市場が縮んでいるのか。
理由はいくつも出せる。
でも、会議では「理由」だけでは終われない。
「で、どうするの?」
この一言に耐えられる答えがいる。
MR時代は、担当エリアの数字に追われていた。
今は全国の数字に追われる。
数字の単位が変わると、プレッシャーの種類も変わる。
MRの頃は、自分が動けば少しは変えられる気がした。
朝から病院へ行き、夕方に薬局へ行き、夜に講演会の案内をして、翌朝また医局前に立つ。
しんどいけれど、足を動かせば何かをした感覚はあった。
マーケティング職は違う。
自分が直接処方を変えるわけではない。
現場が動きやすいように設計する。
でも、現場が動くかどうかは、別の話だ。
医師が聞いてくれるかどうかも、別の話だ。
患者が来るかどうかも、別の話だ。
競合が何をしてくるかも、別の話だ。
それでも、数字はマーケティングにも降ってくる。
半沢(仮)は、会議用のコメント欄に文字を打った。
「現場活動との連動を強化」
打った瞬間、手が止まった。
これ、何回書いたんだろう。
現場活動との連動。
認知向上。
ターゲット明確化。
メッセージ浸透。
どれも間違ってはいない。
でも、言葉が擦り切れている。
現場で医師に断られたMRの顔。
雨の駐車場で車に戻る40代MRの背中。
上司から数字を詰められた営業所の空気。
そういうものを知っているからこそ、簡単に「現場で徹底してください」とは書けない。
でも、書かないと施策にならない。
ここが苦しい。
MRとしての記憶があるマーケターほど、現場にきついことを言うたびに、自分の中の何かが削られる。
転職で成功する人、失敗する人の違いについても、本音で書いている。マーケティング職に限らず、今の場所から動く前に読んでおくと、少し冷静になれると思う。
20時10分、誰もいない会議室で転職サイトを開く
夜の会議が終わった。
20時10分。
会議室には、半沢(仮)だけが残っていた。
さっきまで6人いた部屋は、急に広く感じる。ホワイトボードには、誰かが書いた矢印と数字が残っている。机の上には、飲みかけのペットボトルが1本置き忘れられていた。
半沢(仮)は、ノートパソコンを閉じずに、スマホを見た。
転職サイトの通知が来ていた。
「製薬マーケティング経験者歓迎」
「シニアブランドマネージャー候補」
「外資系製薬会社・年収アップ可能」
指が止まる。
40代。
MR経験あり。
マーケティング経験あり。
大学病院担当も、地方営業所も、本社も見てきた。
市場価値はあるのか。
それとも、もう遅いのか。
この年齢になると、転職は希望だけでは動けない。
住宅ローン。
家族。
子どもの教育費。
親のこと。
今の会社で積み上げた人間関係。
次の会社でうまくいかなかった時の怖さ。
若い頃みたいに、「嫌なら辞めればいい」とは言えない。
でも、このまま続けていけるのかという不安もある。
マーケティング職は、外から見るとキャリアとして強そうに見える。
実際、経験としては強い。
ただ、内側にいる人間からすると、毎日削られる感覚がある。
営業からは「本社は分かっていない」と言われる。
本社内では「もっと戦略的に」と言われる。
グローバルからは「なぜ日本は伸びないのか」と聞かれる。
医師からは予定変更が入り、代理店からは確認依頼が来て、コンプライアンスからは修正が入り、営業部からは現場の不満が届く。
その全部を受け止める。
誰かに怒鳴られるわけではない。
でも、毎日少しずつ沈んでいく。
スマホの画面には、求人票が並んでいる。
年収。
勤務地。
職務内容。
求める経験。
半沢(仮)は、画面をスクロールした。
そして、閉じた。
今はまだ動けない。
でも、いつか動くかもしれない。
そんな中途半端な気持ちのまま、またパソコンを開く。
明日の朝までに、売上進捗の打ち手を整理しなければならない。
外資と内資、どちらがいいのか。これは単純に年収だけでは決められない。文化、人間関係、評価、スピード感、40代以降の居場所。そのあたりは別記事でかなり踏み込んでいる。
22時35分、仕事をこなしても終わらない
22時35分。
オフィスの人はかなり減っていた。
昼間はあれだけ人が動いていたフロアも、夜になると音が変わる。
キーボードを叩く音。
遠くのコピー機の音。
誰かがため息をつく音。
半沢(仮)は、売上進捗のスライドを直していた。
表紙。
現状。
課題。
打ち手。
次アクション。
見た目は5枚。
でも、その5枚の裏に何十通ものメールがある。何本もの会議がある。現場からの声がある。先生との調整がある。代理店との修正がある。レビューで削られた表現がある。
1枚のスライドは、ただの1枚ではない。
いろんな人の都合と本音が押し込まれた、薄い板みたいなものだ。
そこへ、またメールが来る。
「明日の会議ですが、追加で競合情報も入れてください」
半沢(仮)は、目を閉じた。
もう、笑うしかなかった。
競合情報。
入れればいい。
でも、そのためには別の資料を探し、数字を確認し、表現を整え、出典を見直し、言い過ぎていないか確認する。
10分では終わらない。
でも、相手はたぶん悪気なく送っている。
送った側にとっては、1通のメール。
受け取った側にとっては、1時間の作業。
この積み重ねで、夜がなくなる。
MR時代の半沢(仮)は、本社に対して思っていた。
「資料作るだけなら、そんなに大変なのか?」
今なら分かる。
資料を作ることが大変なのではない。
関係者全員が納得できる形にすることが大変なのだ。
しかも、納得してもらったところで、数字が動く保証はない。
半沢(仮)は、スライドに競合情報を1枚追加した。
文字が多い。
削る。
削りすぎると意味がない。
少し戻す。
図にする。
図にすると誤解される。
また戻す。
そんなことをしているうちに、23時を過ぎた。
携帯を見ると、家族からメッセージが来ていた。
「今日も遅い?」
短い一文。
返す言葉が見つからない。
「遅くなる」
それだけ打って、送った。
40代のMRも、マーケターも、きついのは仕事だけじゃない。
会社では中堅以上として見られる。
家庭では父親や夫として見られる。
転職市場では年齢を見られる。
自分の中では、まだ何者かになれる気もする。
でも、体力は確実に落ちている。
その現実が、深夜のオフィスでは妙にくっきり見える。
年収や待遇の話も、避けて通れない。製薬会社の年収については別で整理しているが、数字だけ見ても人生は決められない。それでも、知っておくと冷静になれる。
0時48分、帰り道でMR時代の自分を思い出す
会社を出たのは、0時48分だった。
外は少し湿っていた。
雨上がりのアスファルトが、街灯を反射して光っている。タクシーが1台、静かに通り過ぎた。駅までの道を歩きながら、半沢(仮)はMR時代の夜を思い出していた。
大学病院の駐車場。
雨。
濡れたスーツ。
車の中に置いたiPadとパンフレット。
医師に会えず、薬剤部にも寄れず、上司から「今日の訪問どうだった?」と電話が来る。
「厳しかったです」
そう答えると、電話の向こうで少し間が空く。
「明日、もう一回行ける?」
行ける。
行くしかない。
あの頃もきつかった。
でも、あの頃のきつさは外にあった。
雨。
移動距離。
待ち時間。
医師の冷たい視線。
数字。
本社に来てからのきつさは、内側にある。
終わらないメール。
終わらない会議。
誰にも見えない調整。
言葉にできない責任。
夜中にパソコンを閉じても、頭の中で会議が続く感じ。
どちらが楽か、なんて言えない。
ただ、種類が違う。
MRからマーケティング職に来れば、何かが救われると思っていた。
雨の日の病院駐車場から抜け出せると思っていた。
でも、場所が変わっただけで、別の雨が降っていた。
半沢(仮)は駅のホームで立ち止まった。
スマホを見る。
またメールが来ている。
明日の朝でいい。
そう思って閉じる。
でも、頭の中ではもう返信文を考えている。
製薬会社で働く人間は、どこかでみんな同じような夜を持っているのかもしれない。
営業車の中。
地方のビジネスホテル。
本社の会議室。
新幹線の車内。
家族が寝た後のリビング。
場所は違う。
でも、同じように画面を見て、同じようにため息をついている。
MRからの転職ロードマップも書いている。すぐ辞めろという話ではなく、自分の現在地を一度見直すための記事として読んでもらえると思う。
それでも、マーケティング職に来てよかったと思う瞬間もある
ここまで書くと、製薬マーケティング職はただ地獄みたいに見えるかもしれない。
でも、半沢(仮)は完全に後悔しているわけではない。
たまに、ほんのたまに、救われる瞬間がある。
自分が作った患者像を、MRが現場で使ってくれたとき。
営業所から「この資材、先生の反応よかったです」とメールが来たとき。
講演会の後、医師から「今日のテーマは現場感があったね」と言われたとき。
現場と本社の間で揉めながら作った施策が、少しだけ数字に出たとき。
その瞬間だけは、深夜の作業も、何十通ものメールも、少し報われる。
MR時代には見えなかった景色がある。
全国の市場を見る。
ブランドの寿命を考える。
現場の言葉を戦略に変える。
医師の一言を施策に落とす。
営業部の不満を、次の資材に反映する。
それはたしかに、マーケティング職でしか味わえない仕事だ。
でも、その裏側はきれいではない。
泥臭い。
面倒くさい。
報われない日が多い。
誰かに褒められることも少ない。
「華やかそう」
もしそう思っているMRがいるなら、半沢(仮)はこう言うと思う。
たしかに、見える景色は変わる。
でも、楽になるわけではない。
白衣の先生を廊下で待つ代わりに、会議室で数字を待つようになる。
雨の駐車場で濡れる代わりに、深夜のオフィスで心が湿る。
営業車の中でため息をつく代わりに、誰もいない会議室で転職サイトを開く。
それでも来たいなら、来た方がいい。
MRの経験は、マーケティングで必ず生きる。
現場の空気を知っている人間にしか作れない言葉がある。
医師の視線を知っている人間にしか分からない沈黙がある。
営業所の数字会議を知っている人間にしか見えない現場の疲れがある。
それを忘れずに本社へ来られるなら、マーケティング職はきっと意味のある仕事になる。
ただし、覚悟はいる。
かなり、いる。
転職エージェントを使うかどうか迷っている人向けにも書いている。すぐ登録しろという話ではなく、40代MRが情報を持たずに動く怖さを減らすための記事だ。
最後に。40代MRへ、本音で言いたいこと
40代のMRは、しんどい。
若手のような勢いだけでは動けない。
上司からは結果を求められる。
後輩からは落ち着いた対応を期待される。
医師からはベテランとして見られる。
家に帰れば、仕事だけしていればいい年齢でもない。
それでも、心のどこかで思う。
このままでいいのか。
あと何年、MRを続けるのか。
本社に行けるのか。
転職できるのか。
年収は下がらないか。
家族に迷惑をかけないか。
自分はまだ市場価値があるのか。
半沢(仮)も、同じことを考えてきた。
MRからマーケティング職に来ても、不安は消えなかった。
むしろ、別の不安が増えた。
でも、ひとつだけ分かったことがある。
キャリアは、逃げた先に楽園があるわけではない。
MRにはMRの地獄がある。
マーケティングにはマーケティングの地獄がある。
外資には外資のしんどさがある。
内資には内資の重さがある。
転職してもしんどい。
残ってもしんどい。
だからこそ、自分がどのしんどさなら引き受けられるのかを見た方がいい。
病院の廊下で断られるしんどさなのか。
深夜の会議室で数字を見るしんどさなのか。
上司に詰められるしんどさなのか。
誰にも見えない調整で削られるしんどさなのか。
どれも嫌だ。
でも、全部を避けることはできない。
半沢(仮)は今日も、たぶんまた遅くまで働く。
メールは減らない。
会議も減らない。
数字のプレッシャーも消えない。
それでも、朝になればパソコンを開く。
現場で頑張っているMRがいるから。
患者さんに薬が届く裏側で、誰かが資料を作り、誰かが企画を立て、誰かが調整しているから。
きれいごとに聞こえるかもしれない。
でも、そう思わないとやっていられない夜がある。
そして製薬会社には、そういう夜がたくさんある。
もし今、雨の病院駐車場で営業車の中にいる40代MRがいたら。
もし今、深夜のオフィスで売上資料を直しているマーケターがいたら。
たぶん、あなたはひとりではない。
同じように、どこかで誰かがため息をついている。
同じように、パソコンの光を見つめている。
同じように、「このままでいいのか」と思っている。
その感覚を、なかったことにしない方がいい。
それが、次のキャリアを考える最初のサインかもしれないから。
