「製薬会社のマーケティング職に就きたいけど、どうすればなれるの?」
そんな疑問を持ってこのページにたどり着いた方も多いと思います。
私自身、営業(MR)からスタートし、30代でMBAを取得し、現在は製薬会社でマーケティング職として働いています。
この道のりは決して一直線ではありませんでしたが、ひとつずつ積み上げてきた経験が、今の仕事に確実につながっています。
この記事では、私がどのようにしてマーケターになったのかを、リアルな体験談としてお伝えします。
これから製薬業界でキャリアアップを目指す方、特にMRや開発からマーケに進みたい方にとって、ヒントになる内容になれば幸いです。
なぜMRからマーケティングを目指したのか
「MRの仕事にやりがいを感じながらも、どこか物足りなさがあった」
私は新卒で製薬会社に入社し、最初の配属はMR(医薬情報担当者)でした。大学病院や基幹病院を担当し、医師との面会や製品説明、資料提供、講演会の運営など、いわゆる「現場の最前線」で多忙な日々を過ごしていました。
もちろん、製品を通して医師や患者さんに貢献している実感はありましたし、医療現場のニーズに応える仕事に誇りも持っていました。
しかし、3年目に差し掛かったころ、ある疑問が自分の中に芽生えました。
「このプロモーションは、誰がどんな考えで作っているんだろう?」
「もっと大きな視点で、製品戦略に関わる仕事がしたい」
という感覚です。
プロモーションの“上流”を知った瞬間、視座が変わった
転機となったのは、ある新製品の上市を控えた社内説明会。マーケティング部門のブランドマネージャーが登壇し、年間のプロモーション戦略をプレゼンしてくれました。
「競合品とのポジショニング」、「エビデンスを軸にした訴求内容」、「医師と患者のペルソナ設計」など、まさに戦略と論理で市場を動かす視点がそこにはありました。
そのとき私は心の中でこう思ったのを覚えています。
「こんな風に、製品の未来を“設計”できる仕事があるんだ」
「目の前の医師だけでなく、日本中の医師の行動に影響を与える立場になりたい」
その瞬間、「マーケティング職」というキャリアの方向性が、自分の中ではっきりと定まりました。
営業経験を活かして、次のステージへ進みたい
MRとして現場で得た知見は、マーケターになった今も非常に活きています。医師の本音、KOLの考え方、プロモーション資材の使い勝手、そういった「現場の肌感覚」は、会議室では得られない貴重な視点です。
だからこそ私は、「現場」と「戦略」の橋渡しができるマーケターになりたいと思いましたし、MR出身であることは強みになると信じていました。
ただし、戦略立案には知識もロジックも必要です。
そのギャップを埋めるために、私は次に「MBAの取得」を目指すことになります。
MBA取得を決意した理由と通学中のリアル
なぜ今、MBAが必要だと思ったのか?
MRからマーケターへの転身を本気で考えたとき、最初に突き当たったのは「戦略を立てる視点」と「数字を読み解く力」の壁でした。
現場の肌感覚には自信があっても、実際にブランドプランを設計するとなると、
市場分析のフレームワーク(3C分析やSWOTなど)
売上やROIの計算・予測
他部署を巻き込むリーダーシップ・交渉力
など、これまでの仕事ではあまり求められなかったスキルが必要になることを実感しました。
また、マーケティング部門に異動しても、戦略設計を任される立場になるには「論理性」や「経営的な視点」が不可欠だと感じていたのです。
そこで私は、国内MBAプログラムの進学を決意しました。
仕事と通学の両立は想像以上に過酷だった
入学後は、平日は19時から講義、土日は授業・課題とグループワーク。
フルタイムで働きながらのMBA生活は、体力的にも精神的にも厳しいものでした。
たとえば、ある週はこんなスケジュールでした。
月~金:8:30~18:00まで通常勤務、19:00~22:00 MBAの授業
土曜日:授業・グループ課題のディスカッション+レポート執筆
日曜日:授業課題のプレゼン準備+翌週の講義予習
家族の理解と、同級生との支えがなければ乗り越えられなかったと思います。
MBAで得た知識と、自分の中に起きた変化
MBAでは、マーケティング論はもちろんのこと、ファイナンス、会計、戦略論、組織論など、今まで触れてこなかった領域も体系的に学ぶことができました。
特に印象的だったのは、「事実と解釈を分ける力」が鍛えられたことです。
例えば、ある製品の売上が下がったというデータがあったとき、以前の私は「競合が強くなったから」と単純に考えていたかもしれません。
でも今は、「市場環境」「チャネル構造」「ターゲット医師の変化」「プロモーションのKPI達成度」など、複数の要素を分解し、構造的に原因を探るようになりました。
MBAを通して得たのは、単なる知識ではなく「考え方のフレーム」だったと思います。
自信を得て、いよいよキャリアチェンジへ
WBS修了後、私は社内のマーケティング職の公募にチャレンジし、無事に異動が決まりました。
実際には、MBAでの学びが直接評価されたというよりも、「明確な目的意識を持って努力してきた人材」としての信頼が、面接や選考の場で大きかったと感じています。
このMBAでの経験が、私のキャリアの大きな転機になったのは間違いありません。
社内公募を勝ち取るためにやったこと
「誰でも応募できる」は嘘じゃない。でも勝ち取るには“準備”が必要だった
MBA卒業後、社内でマーケティング部門のポジションが公募されることを知り、すぐに応募を決意しました。
しかし、実際に社内公募に応募してみて感じたのは、
「公募制度は“自由”に開かれているように見えて、選ばれるには戦略が必要」
ということでした。
マーケティングのポジションには当然、他の優秀なMRや開発職の社員も応募してきます。その中で自分を選んでもらうには、単なる熱意や希望だけでは不十分です。
自分だけの「ストーリー」と「実績」を言語化した
私が面接や書類で特に意識したのは、「なぜ自分がこの職に適しているのか」をストーリーとして説得力を持たせることでした。
実際にアピールしたポイントは以下の通り:
現場で感じたマーケティング上の課題
(例:「全国で同じ資材を使っても効果に差が出る理由」など)MBAで学んだことと、それがどう活きるか
(例:「市場分析・STP戦略・KOLマネジメントへの応用」)MR時代の成果と、そこから得た“現場感覚”
(例:「KOLと信頼関係を築いた成功体験」など)
書類作成は、履歴書や職務経歴書とは別に「自己PR文(1,000字)」の提出が求められましたが、私は「戦略的に自分を売り込む」つもりで練りに練りました。
上司と周囲の理解をどう得たか?【社内異動のリアル】
社内公募は「現部署の上司に伝えるタイミング」も非常に悩ましいポイントです。私もかなり迷いましたが、早い段階で正直に気持ちを伝えることにしました。
上司には、
「キャリアとしてマーケティングを本気で目指している」
「MBAを取ったのも、この目的のため」
「異動しても現部署の仕事は最後まで責任を持ってやり切る」
と誠意を持って説明しました。
結果的に、上司も「応援する」と言ってくれ、後押ししてもらえる形になりました。
これは非常に大きな安心材料であり、選考時の推薦コメントにもつながったと思います。
「準備してきた人間」は、ちゃんと伝わる
最終的に私は、公募選考の中で無事にマーケティング部門への異動が決まりました。
入社以来、ずっと現場一筋だった自分が、ようやく“戦略をつくる側”に立てた瞬間でした。
振り返れば、ただ希望を口にしていたら選ばれていなかったと思います。
現場経験をどう活かせるか
MBAで得た知識をどう応用するか
自分の強みは何か
これらを明確に言語化し、「この人なら任せてもいい」と思わせる準備をしていたからこそ、チャンスを掴めたのだと実感しています。
転職希望者に伝えたい3つのこと
「どうすれば製薬マーケティング職に就けますか?」という相談をよく受けます
ブログやSNSを通じて、よくいただくのがこの質問です。
「製薬会社のマーケティングに興味があるのですが、どうすれば異動や転職ができますか?」
私自身も、MR時代は同じ疑問を抱えていましたし、情報も少なく、不安も多くありました。
だからこそ今、実体験をもとに「これを意識しておけばチャンスが広がる」と感じるポイントを3つに絞ってお伝えします。
1. 自分だけの「キャリアのストーリー」を持とう
どんなにスキルがあっても、「なぜマーケティングをやりたいのか?」という軸が明確でなければ、説得力が生まれません。
異動面接や転職面談では、単なる興味や年収アップ志向よりも、「現場経験をこう活かしたい」「自分はこういう市場を作りたい」というストーリー性のある志望動機が重要です。
私も、「現場で感じた課題感」→「MBAで補った知識」→「戦略で解決したいという意志」の3点をセットで伝えるようにしていました。
2. 数字・構造で物事を語る練習をしよう
マーケティング職は、「感覚」ではなく「構造と数字」で議論する世界です。
市場分析(3C・STPなど)
シェア変動やKPIの読み解き
ロジックを持った施策立案
これらを日々扱うため、普段から「仮説→検証→構造化して説明する」トレーニングを意識することをおすすめします。
営業職の方であれば、月次の売上分析やエリア別の傾向を「なぜこうなったのか?」と因数分解して考えるクセをつけると、マーケに通じる思考が自然と養われていきます。
3. 転職・異動は“制度”より“準備”が鍵
「社内公募があればチャンス」「転職市場が今は動いている」といった外部要因にばかり目が向きがちですが、実際に内定・異動を勝ち取るのは「準備してきた人」です。
具体的には:
普段の仕事でのアウトプット(上司評価)
プロジェクト経験や提案事例(数字ベース)
業界や製品、患者背景への継続的な興味
社内外のネットワーク
これらを一貫性のあるキャリアストーリーにまとめることが、選考においては非常に重要になります。
結論:マーケターになりたいなら、すでに“マーケ的な思考”を始めよう
マーケティング職を目指すにあたって大切なのは、異動や転職の「チャンスを待つこと」ではなく、日々の仕事や学びを通して“準備”を進めることです。
現場の仕事を深掘りし、数字を分解し、業界動向をウォッチし、仮説を立てる――
それはすでに、マーケティング職の一部を“先取り”していることになります。
そしてそれが、チャンスを引き寄せる最大の要素になると、私は実感しています。
まとめ:マーケターになって感じたやりがいとキャリアの広がり
「患者さんのために」を、もっと大きな視点で考えられるようになった
MR時代、私は医師との1対1の関係の中で、製品の価値を伝えてきました。
一方、マーケターになった今は、全国の医師・患者さんに向けて、製品の「意味」や「存在理由」をどう設計するかを考えるようになりました。
一つのスライド、一つの講演、一つのWebコンテンツ――
それが“何千人の処方行動”に影響を与える可能性があると実感したとき、「この仕事のインパクトは想像以上に大きい」と感じました。
正解がないからこそ、自分の仮説で市場を動かす面白さがある
マーケティングの仕事には、絶対的な正解はありません。
ある戦略が功を奏することもあれば、まったく響かずにやり直しになることもあります。
でも、自分で仮説を立てて、市場を分析して、資材を作り、社内を巻き込み、医師に届けて――
その結果、売上やシェアが動いたときの達成感は、営業時代とはまた違った種類のやりがいがあります。
しかもそれは、「個人の成績」ではなく、「製品の未来」に直結する仕事。
その責任と重みがあるからこそ、真剣に、でも前向きに取り組めるのだと思います。
製薬マーケティングのキャリアは“可能性”に満ちている
製薬業界のマーケティング職は、以下のように多様なキャリアパスと親和性があります:
社内での昇進(ブランドマネージャー→BUヘッド)
海外赴任(グローバルマーケなど)
他社への転職(外資・ベンチャー含む)
コンサル・アカデミア・スタートアップ支援
特に近年は、デジタル・リアルワールドデータ・KOL連携など多様なチャネルが広がり、マーケターとしての活躍の場も加速度的に拡大しています。
これからの時代、現場経験を持った戦略思考型人材へのニーズは確実に高まるでしょう。
最後に:今のあなたのキャリアにも、必ず「資産」がある
もし今、あなたがMRや開発、学術、営業企画など、現場に近いポジションにいるとしても、それはマーケターになる上で「大きな“資産」です。
大切なのは、それをどんなストーリーに変えて伝えるか。
そして、自分が目指す未来に対して、どんな準備を今日から始めるか。
このブログが、その第一歩のきっかけになれば幸いです。
次のステップ:マーケ職を目指すあなたへ
転職や異動を本気で考えはじめた方には、製薬業界に強い転職エージェントに相談してみるのもおすすめです。
「まだ情報収集段階」という方でも、最近の求人傾向やスキル要件を知るだけで、行動が変わります。
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私自身も、まずは話を聞くところから一歩を踏み出しました。
あなたのキャリアが広がっていくことを、心から応援しています。